旅先ででかけた骨董屋さんで仕付け糸がついたままの1枚の古い着物と出会いました。
なんでも近くの旧家が取り壊されることになり、その家から箪笥ごと引き取ってきたそうです。
どうみても私が着るには小さいんだけど、アルファベットや数字にみえる不思議な柄に引きつけられて私の元に。
さて、どうしたものか相談しようとお仕立て屋さんへ行くと普段は顔を見せない先代のご主人がお店に出てきました。
私の持ち込んだ着物を手にとり「これは、珍しい柄だね、きっと小柄なおばあさんの着物だよ。」と。
「なぜ、おばあさんの着物とわかるのですか?」の言葉を合図ににわかに講義が始まりました。
女性の着物の袖は娘時代は袖が丸く、お嫁に行って主婦となると、男性と同じように角張った袖の着物を着ていたそうです。
そして、主婦の座を次の世代に渡した後は、また娘時代と同じ丸い袖に戻すのですが、ご主人のオフィシャルな場面では、角の袖の着物を(妻として)着る。
また、商家の場合男性は、裾の長さでステイタスを表現したそうです。
丁稚は短く、職場(?)での位が上がるごとに長くなっていき、ご主人はやや長めに着るのだとか。
細々と動かなくてもいい地位にあることを表しているんだって。
さらに、けんかをする職業の人(笑)の着物は蹴ろうとする足がスムーズに出てくるように打ち合わせを浅く着ることや、江戸時代の男性の着こなしのトレンドは八丁堀同心がつくっていたなんていう時代劇さながらの興味深いお話を聞かせていただきました。
プロは着物を手にとると、作られた時代や着ていた人のことがプロファイルできるらしい。
着物の形、素材、着こなしで自らの矜持をしめす、奥ゆかしい文化があったのですね〜、と私。
バリエーションが増えて、ルールからも自由になった今、「装う」ことで表現できることってなんだろう?
あれからずっと考えています。
そうそう、くだんの着物は相談の結果、帯に仕立て直してもらいました。
ちょっと渋めの普段着に。
私にはやっぱりアルファベットにみえるんだけどなあ〜。
2014年8月19日
東京生まれ。ウェブサイト「fringe」を運営。『anan』『nonno』を読んでた小学生、中学生で『popeye』が創刊、『JJ』を片手に高校を卒業すると世は空前の「女子大生」ブーム。バブル期には広告業界、雑誌業界でお花やインテリアのスタイリスト。その後カリスマ美容師ブームの中、美容室業界へ。20年働いた原宿の美容室のマネージャーを2013年に卒業。時代の勢いにのり、人に助けられ、あふれる情報の中、いつも『おいしい』トコをいただいてきた私。これからの自分にとってホントに欲しいものって何だろう?と探しはじめたところです。過去のインタビュー記事はこちら。